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パワハラ加害者が新社長に就任~(★新刊『ブラックを乗り越えた女性たち』より~)

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やがて日本支社では、三月づけでTさんが正式に社長として就任した。とうぜん、地位を利用した遠野さんへの攻撃は激化した。

敵は遠野さんのスケジュールがハードな時期をねらい、とびこみの仕事をメールで命令するなど、無茶な仕事をふってきた。「今日の十四時までに終わらせて提出しろ」と、ごていねいに赤字での指示出しである。

スケジュール上の仕事を優先させなければならない遠野さんが十四時までに提出できないと、すぐさま「提出はどうした? どういうことだ?」と抗議のメールがくる。説明すると、「じゃあ、今日の十八時までに出せ!」と、これまたすぐに赤字のメールがとどく。

対応不可能な仕事を繰り返し与え、下地をつくった後に、T社長は香港総支社のバネッサにメールを送った。

「サユリは仕事のしめきりをまもらない。仕事がまったくできない社員で私はほんとうに困っている」

そういって遠野さんを中傷した。

それを遠野さんの目にわざわざふれるよう、遠野さんのメールアドレスをCCにしてやり取りをするという徹底ぶりだった。

 

さらに、人事課長である遠野さんが、仕事関連の人事セミナーなどに出席すると、「無断外出だ!」とわめきちらす。ちなみに今まで、セミナーなどはスケジュールに組み込まれてきた、ごくふつうの業務だったという。

遠野さんが説明すると、「うそをついているんじゃないか。セミナーに出席したという証拠を出せ」と責めたてる。

あげくのはてに、「何時から何時までは何の書類作成をして、何時から何時までは誰と打ち合わせをして、」のような分刻みの日報を提出しろと要求してきた。

繰りかえすが、遠野さんは勤続三十年の人事課長である。

「小学生じゃないんだから」
遠野さんはため息をついた。

 

私には遠野さんの当時の心労がよくわかった。私も被害経験のあることだが、パワハラというのは、やろうと思えば際限なく仕掛けることが可能だし、どのようなささいなことをネタにしても、自由に攻撃できるものなのだ。その創意工夫と行動力を仕事に注げば、会社の利益は飛躍的にアップすると思うのだが、パワハラをする人間というのは、そのような建設的な思考をもちあわせていない。あきれるくらいネガティブなエネルギーを、他人をおとしいれる目的だけに、せっせと浪費する。あの情熱はいったいどこからくるのだろうか。

 

私はつねづね思っているが、ビジネスに感情論を持ちこんではいけない。ビジネスというのは経済活動である。パワハラは、たんなる感情的なトラブルを招くだけではなく、就労環境を害し経済的損失をまねく、会社への違背行為でもある。

会社というのは、利益を生み出すことがひとつの大きな目的だ。セクハラやパワハラで社員のモチベーションを下げ業務効率を低下させるのは、会社に対する違背にほかならない。考えなしにそのようなことをするのは、会社組織に所属する人間として社会人として、自覚が足りないといわざるをえない。社会人としてきわめて未熟な行為なのである。

 

パワハラの嵐の中、遠野さんも人事にいた人間として、なにもしなかったわけではない。アメリカ本社のコンプライアンスオフィサーにTのパワハラを伝えた。日本でいうところの、企業内セクハラ・パワハラ窓口担当者のような役割だという。彼に今までの経過を英語でメール相談した。

結論から言うと、そのコンプライアンスオフィサーの男性は、まったく役に立たなかった。

「アメリカって、セクシュアルハラスメントには神経質なくせに、パワーハラスメントに対しては無頓着。そもそも文化が違うのよ。アメリカって本当に個人主義。だから、日本みたいな村(ムラ)的な組織ぐるみのいじめっていう背景がないのよね。彼らには実感がわかないの。『それはサユリと上司との人間関係の問題だから』って。アメリカ人にとっては、ブリーン(いじめ)も個人主義なのよ」

 

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面倒な「会計検査」が終わった途端に使い捨て~(★新刊『ブラックを乗り越えた女性たち』より~)

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 しかし四月の下旬、経費削減との理由で、加奈さんはいきなり五月末までの雇止めを言いわたされたのだ。 

「かりに更新期間が六ヶ月から三カ月に短縮されたにしても、それでも六月末までは契約期間だったはず」

加奈さんはおどろいて、派遣元に問い合わせた。
すると派遣会社の若い男性担当社員は答えた。

「たしかに二月中旬に契約更新の打診をしたときは、六月末までの契約だったんですけどね。実際に契約をする三月末頃になって、財団法人から、五月末の契約に変更してほしいとの依頼があったので変更したんですよ。そのことはあなたにお伝えしたつもりでしたが……」

 加奈さんはそのような説明は、いっさいうけていなかった。本人の承諾なしに、勝手に契約内容を変更した派遣会社に憤慨した。

「だまされた! ってかんじよ。予算の都合で、切るなら切るでしかたない。でも、だったら、卑怯な手なんか使わないで、三月末で打ち切るべきじゃない? いちばんやっかいな五月の会計検査のときだけ利用してさ、その後すぐに使い捨てるってひどすぎる」 

「ほんと、手口が汚すぎるね。しかもたった一カ月じゃない。その短い期間を節約するために、だましうちみたいなやり方して。姑息にもほどがある」

 私も話を聞いて腹立たしかった。このやり口はひどすぎる。

 加奈さんの所属課では、職員の異動が多く、とくにその年度は入れ変わりがはげしかった。新しい職員は経験が浅く、会計検査の準備にも慣れていなかった。そのため、事実上は派遣社員である加奈さんが先頭きって処理を進め、検査にも立ち会ったという。
 財団法人の規定を熟知していなければできない業務であり、それ以外の分野についても勉強が必要だったが、長期にわたって仕事を任されていたという自負もあり、加奈さんは自主的に学び、多くの業務をこなしてきた。
 しかし結果は、財団法人の都合で使いたいところだけ使って、切り捨てるというやり方だ。

 加奈さんは派遣会社の担当に抗議した。その若い担当男性社員は、すぐに自分の上司に話をつないだ。

 派遣会社の上司は、まず連絡がスムーズにいかなかったことをわび、一カ月の解雇予告手当てを払うからと打診してきた。そのうえ、本来ならば六月末までの契約だったと主張する加奈さんの言についても、一カ月ぶんノーワークで満額はらうと言ってきた。

「でも、そんなのあたりまえじゃない? 要は当初の契約どおりっていうだけのことよ」

 加奈さんは、もやもやした胸のうちがおさまらなかった。

「私はね、何もお金が欲しくて文句を言っていたわけじゃないの。そりゃあ、もちろんもらえるものはうれしいけど、それ以外の気持ちの問題があった。くやしかったのは、だまされて、五月半ばまで手伝わされたこと。三月でいきなり切られたのなら、ここまでゴネなかった。仕方ないやって思ったかも。何ていうのかな……お金、ていうのはあくまで気持ちの整理のためであって、きちんとした形あるものを得ないと、ずっとこの胸のもやもやがつづくって思ったし、どうにかケリをつけたいって思って……う~ん、うまく説明できないんだけど、こんなやり方で、こんなふうな扱いって……人に対してどうなのかなって……」

 私も仕事に関しては様々なトラブルに直面し、乗り越えてきたので、加奈さんの気持ちは痛いほど理解できた。

「わかります。自分のことだけじゃないんだよね。お金をもらうのは悪いことではないし、気持ちをふみにじられた対価としても当然のことだと思うのだけど、突きつめると、それが目的ではない。ここで自分が声をあげなかったら、こんなやり方を許して泣き寝入りしてしまったら、またおなじことが繰り返されるかもしれない。次はターゲットがほかの人に移るだけ。だからこそ、労働者に対して不当な扱いをすればトラブルがおきるし、慰謝料が発生するし、結局は経済面からも組織としてデメリットになるっていうことを、派遣会社に肌身で感じてもらう必要があったんでしょ? 現実としての損失金額を目の当たりにしないと、彼らは反省も改善もしないから。そのための手段として、金銭の決着は大切だって考えたんじゃない?」

 加奈さんはひざを打った。
「そう! そうなのよ! ありがとう、言葉にしてくれて! そのとおりよ。金銭っていうのは、手段なのよね。目的じゃなくて」

 私は大きくうなずいた。
 労働問題で声をあげる人のことを、「金銭目的じゃないの?」と色メガネで見る人もいるが、決してそれだけではない心情をわかってほしい。ある種の正義感が行動を起こさせることも少なくないのだ。

「で、スムーズにいったの? 普通はそうカンタンにはいかないと思うけど」

 加奈さんは苦笑した。 

「ご想像のとおりよ。派遣会社は、六月までの一カ月分賃金の満額と、解雇予告手当で精一杯。お気持ちはわかりますが、それ以上は払いたくても、そういうものを払うシステムがないので。だって」

 加奈さんは、それじゃあ労組に相談してみますと売り言葉を口にしたところ、相手はどうぞご自由に、という感じですげなく電話を切った。

 

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東電OLセミナー資料①

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「働く人のセーフティネット」セミナー

平成26年12月20日  講師 有馬珠子

<事件概要>
1997年(平成9年)渋谷区円山町にあるアパート喜寿壮の1階空室で、東京電力東京本店に勤務する渡辺泰子(当時39歳)の遺体が発見された。死因は絞殺。

警視庁は、不法滞在(オーバーステイ)していたネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリ(当時30歳)を殺人事件の実行犯として強盗殺人容疑で逮捕した。ゴビンダ氏は被害者・渡辺泰子が生前に売春した客の一人でもあった。逮捕されたゴビンダは捜査段階から一貫して無実を主張し、一審無罪、控訴審での逆転有罪、上告棄却、再審決定を経て、2012年に無罪が確定した。
周囲を驚かせたのは、被害者女性は、慶應義塾大学経済学部を卒業した後、東京電力に初の女性総合職として入社したれっきとしたエリート社員(未婚)であったが、後の捜査で、退勤後は円山町付近の路上で客を勧誘し売春を行っていた二重生活が判明したからだ。警察の見立ては、売春相手の客との金銭交渉トラブルで殺されたという筋で、調査された。
被害者が、昼間は大企業の幹部社員、夜は路上で客をひく売春婦と、全く別の顔を持っていたことがマスコミによって取り上げられ、被害者および家族のプライバシーをめぐり、議論が喚起された。

背景>
・父親が東大卒、母親は名家出身で日本女子大卒、妹は東京女子大卒、泰子は慶応女子高から慶応経済学部に進学した高学歴家族。
・女性としては初の東京電力総合職の地位に就く。生きていれば現在57歳。
・父親も東電社員であったが、泰子が大学二年、20歳のときに役員一歩手前にして癌で病死。
・泰子は父親を敬愛し、父親も泰子を溺愛していた。幼い頃から父の期待に応える優秀な娘だったという。父と同じ東京電力に入社したときも、「父の名に恥じることのないよう頑張ります」と述べている。

時系列>
1957年 生誕
1973年 16歳 慶応女子高入学
1976年 19歳 慶應義塾大学経済学部入学
1978年 20歳・敬愛していた父親をなくす。それをひきがねに拒食症に。
1980年 23歳・東京電力入社
1985年 28歳・社内ハーバード留学選抜で、同期入社の東大卒のライバル女性が選ばれる
1986年 29歳・東大卒のライバル女性渡米。これと同時期、泰子は拒食症で入院
1986年 29歳・経済論壇への登龍門といわれる高松亀吉賞の佳作を受賞。
1988年 31歳・別会社に出向を命じられる。
1989年 32歳・夜のクラブホステスや風俗を始める。
1991年 34歳・渋谷界隈で体を売るフリーの売春婦になる。
1991年 34歳・出向を終えて東電に戻る。企画部経済調査室副長という要職に就く
1997年 39歳・死亡

<奇妙な行動>
・円山町の「白塗り妖怪」と呼ばれる。会社を出ると渋谷の109トイレで着替え、売春用の厚化粧に塗り直し、長髪のかつらをかぶり、ベージュのコート・肩には革のショルダーバッグという決まったいでたちを固守。
・ホテルのベッドで排便したり路上で放尿するなど、奇行で出入り禁止になったことも。
・摂食障害を患っており、殺された当時は骨と皮だけの骨格標本のようだった。
・売春後、必ず終電電車で実家に帰宅していた。電車の車内でむさぼるようにコンビニおでんをすするなど奇異な行動が目立った。おでんはいつもこんにゃく、しらたき等、ローカロリー。
・経済的理由から売春していたのではない。東電管理職当時、泰子の年収は一千万以上であった。
・彼女の残した克明な売春手帳記録によると、一回2千円、3千円の記述もある。ホテル代がない外国人出稼ぎ労働者には、駐車場ですませたこともあった。金額よりも人数ノルマにこだわっていた。
・「逆両替」に固執していた。ビール中ビンの空き瓶を酒屋に持参し、五円、十円とたまると百円玉に、百円がたまると千円に替える。
・一日四人という過酷なノルマを達成し、井之頭線神泉駅から自宅の西永福まで、毎日終電できっちりと帰宅していた。翌朝は、毎日時間通りきちんと出社していた。
・母親も妹も、泰子の売春行為を知っていた。

<男性の見立て>
・未婚で仕事に没頭したキャリアウーマン。女性としての幸せを手に入れられず、朽ちていく自分が女として許せなかった。女としての解放。佐野眞一氏などはもっと深く考察している。

<その他専門家の見立て>
・強迫観念症(不合理な行為や思考を自分の意に反して反復してしまう精神疾患の一種である。ばい菌がついているという思いこみから何度も手を洗ったり、トイレに入る前はスリッパを必ず同一に置き、四方の壁を触ってからでないと用をたせないなど、儀式的なルールに縛られる。
・インナーマザー症候群
・エレクトラ・コンプレックス(女児が父親に対して強い独占欲的な愛情を抱き、母親に対して強い対抗意識を燃やす状態を指す。実際、売春行為の事実を母親につきつけて復讐していた)
・父のむすめ(男社会に取り込まれ、男社会で評価されることをよしとする娘。それ以外の価値を構築できない)

<私の見立て(他書と共有あり)>
①「お父さんの名に恥じぬよう」という自らの描いた出世コースが実現されなかったとき、物事をきっちりとこなす生真面目な泰子のプランが軌道からそれたとき、自己破壊への扉が開いた。

② 仕事に全力を賭けたが「男社会」の壁は厚く、ストレスの中で徐々に神経を摩耗させ拒食症になっていった。父の代わりになれなかった自分を戒めるため、売春して自分を罰し始めた。

③「売春」という行為は男社会への従属であると同時に、性欲に支配される男性性を見下す行為。自分でも説明不可能な、両極端ともいえるアンビバレンツな感情に耽溺していったのでは。

④「父と自分」のチーム性。名家出身の母親は、夫を侮蔑するような発言を常日頃していたという。「母と母親似の妹」という女性チームへのあてつけのため、みずからの女性性を汚していたのか。

⑤ 自分を評価してくれなかった大企業東電とは別の「仕事」を作り出し、過酷なノルマを達成することで、自己が評価されなかった帳尻をあわせようとした。

⑥ 緩慢な自殺。精神的自傷行為。その意味でいうなら、彼女は殺されることで目的を達した。

⑦その他、いずれ書籍で。

<類似ケースМさん>
・父親が東大卒、大手企業の幹部。母親は有名女子大卒の美女。お姉さんはかわいらしく朗らかな性格で、有名私立中等部から大学までをエスカレーターで卒業。Мさんは中等部から慶応。慶應義塾大学経済学部を卒業。
・親の愛がすべて、明るくてかわいい姉に注がれていると感じていた。その原因は自分が美しくもないし良い子でもないからだと、自責の念にかられていた。(実際は端正な顔立ちだった)
・在学中に摂食障害にかかり、30キロ近くまで体重が落ちる。痩せたことで親の心配(愛情)を得られるという快感を覚え、拒食症が嗜癖になったと思われる。
・「親にとって自慢の良い子になる」ための手段として司法試験に専念。弁護士になり何かをしたいというのが目的ではない。

<根本的な解決法>
・女性の社会進出があたりまえの世の中になった。しかしこのことで、女性の幸せ・自己実現にはダブルスタンダードが生まれた。
(1)仕事での成功と、
(2)恋愛・結婚・出産など女としての成功と。
この両方をバランスよく手に入れた女性のみが「真の成功者」という称号を贈られている。社会の無言の押しつけ。
・自分の価値を他人に委ねない。(泰子は父親→会社へと、つねに他者に価値判断を委ねていた)
・自分の主人は自分である。
・「社会が、他人が決めた幸福像」にまどわされないことが大切。
・「自分にとって何が幸せか」は、自分が決めること。
・もう一度自分の「心の声」「真の欲求」と向き合うことが大事。本当の自己実現は何か。他者の価値観を自らの自己実現にすり替えられてはいないか。自分と会話できているか。
→渡辺泰子氏の場合・・・「父親の喜ぶ優秀な娘」「父の代わりに父のいた会社でバリバリ出世する大企業の優秀な社員」
→Мさんの場合・・・・「親に愛される優等生で自慢の娘」

<結論 自己治癒力>
・存在価値を他者に委ねない
・肩書や性的評価など、俗物的な一側面の価値観に流されない。意味がないことと知る。自分の価値を自分で決める強さをもつこと。
・「性・女性」であることに苦しむならば、「人間・女性」へのシフトを試みる。
・心の出家。(恋愛も結婚もするなということではない。性の見方というのは結局半分だけの見方。半分だけの性からまるごとの個へとシフトしたとき、自分が楽になれる。ありのままの自分が見えてくる。

<参考資料>
「東電OL殺人事件」 佐野眞一(新潮文庫)
「東電OL症候群」 佐野眞一(新潮文庫)
「穴があったら落っこちたい」 中村うさぎ(角川文庫)
「女という病」 中村うさぎ(新潮文庫)
「愚者の道」 中村うさぎ(角川文庫)
「私という病」 中村うさぎ(新潮文庫)
「グロテスク」 桐野夏生(文藝春秋)
「誰が私を殺したの~三大未解決殺人事件の迷宮」 朝倉喬司(恒文社
「女ぎらい — ニッポンのミソジニー」 上野千鶴子(紀伊国屋書店)
「空室」 柴田千晶(ミッドナイト・プレス)
「あなたの心が壊れるとき」 高橋龍太郎(扶桑社)

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東電OLセミナー画像②

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「働く人のセーフティネット」セミナー

平成26年12月20日  講師 有馬珠子

セミナー開催にあたり、私は実際に被害者の足跡をたどりました。
彼女が会社を出てからトイレで着替えたという109をスタートし、道玄坂をのぼり道玄坂下交番前を折れる。円山町路上で客引きをする定位置であった地蔵前に行き、そこから絞殺された殺人現場の喜寿壮にまで足を運びました。彼女の心の闇を読み、気持ちを追いながらシンクロできるかを試みたのです。

私が感じ取ったのは、深くて暗い風穴でした。ふさごうとしてもふさごうとしてもなお豪風が吹き寄せ、右をふさぐと左が裂ける、大きな大きな穴。それでも修復する方法はあったはずです。彼女がその術を知らなかっただけで。
社会的自己実現と引き裂かれる自我。セミナーではほんの一端しか語れませんが、無自覚の歪みと「内なる自分」を見つめなおす契機となりましたら幸いです。

セミナーを終えて、最後に。
「東電OL」に対しては興味本位からさまざまな記事が流出しましたが、私たちは結局のところ、憶測でしかものを言えません。真実はご本人にしか分からないことです。
また、結果として不幸な亡くなりかたをされましたが、彼女が女性キャリアの先駆者であり、優秀なエコノミストであったことに変わりはなく、同じ女性としてここに敬意を表します。

退勤後、109のトイレで着替えたという
退勤後、109のトイレで着替えたという

道玄坂を上る
道玄坂を上る

賑やかな大通りをのぼる
賑やかな大通りをのぼる

道玄坂下交差点、交番に突き当たる
道玄坂下交差点、交番に突き当たる

交番の左脇の道を折れる
交番の左脇の道を折れる

すぐファミリーマートが見えるので、そこを右に折れると地蔵行き
すぐファミリーマートが見えるので、そこを右に折れると地蔵行き

泰子氏が毎日客引きのため立っていた定位置・地蔵前
泰子氏が毎日客引きのため立っていた定位置・地蔵前

「泰子地蔵」と呼ばれている。顔を撮るにはしのびなくて写せていないが、誰が塗ったかルージュがひかれている。
「泰子地蔵」と呼ばれている。顔を撮るにはしのびなくて写せていないが、誰が塗ったかルージュがひかれている。

1分もかからずファミマに戻り、坂をくだるとすぐに金井青果が見えて来る。
1分もかからずファミマに戻り、坂をくだるとすぐに金井青果が見えて来る。

金井青果のご主人も、泰子氏の最後の目撃者のひとり。
金井青果のご主人も、泰子氏の最後の目撃者のひとり。

この辺りは裏路地にホテル街が密集している。
この辺りは裏路地にホテル街が密集している。

60~70のホテルが林立する。
60~70のホテルが林立する。

金井青果を下るとすぐにローソンの看板が見えるので、右の坂をくだると神泉駅。わりとわかりにくい場所に駅がある。
金井青果を下るとすぐにローソンの看板が見えるので、右の坂をくだると神泉駅。わりとわかりにくい場所に駅がある。

踏切を渡ると5メートルもしないうちに半地下のまん福亭が見えて来る。この1~2階が喜寿壮。
踏切を渡ると5メートルもしないうちに半地下のまん福亭が見えて来る。この1~2階が喜寿壮。

数段の階段を上ると、すぐ手前が泰子氏の殺された101号室。
数段の階段を上ると、すぐ手前が泰子氏の殺された101号室。

喜寿壮の入口。かなりふるぼけたアパート。分かりにくいが、101号には明かりがともり、ドアにはクリスマスリースが飾ってあった。

手前が101号、奥が102号。写真を撮っていたら、ちょうど101号の住人が戻ってきた。東南アジア系(?)の外国人。グレーのバンで乗り付けて、荷物を積むとまた去って行った。
手前が101号、奥が102号。写真を撮っていたら、ちょうど101号の住人が戻ってきた。東南アジア系(?)の外国人。グレーのバンで乗り付けて、荷物を積むとまた去って行った。

反対側からのアングル。駅近の立地。線路の音がうるさい。家賃は安いはず。
反対側からのアングル。駅近の立地。線路の音がうるさい。家賃は安いはず。

より線路に近いまん福亭となりの白いアパートに、ゴビンダ氏はオーバーステイの知人と4人ほどで暮らしていたという。そのため、殺人容疑で名前があがった。
より線路に近いまん福亭となりの白いアパートに、ゴビンダ氏はオーバーステイの知人と4人ほどで暮らしていたという。そのため、殺人容疑で名前があがった。

神泉駅を左に行くと、高級住宅街の松濤が現れる。渋谷の喧騒、暗黒の円山町、高級住宅街の松濤と、渋谷はさまざまな顔を持つ。
神泉駅を左に行くと、高級住宅街の松濤が現れる。渋谷の喧騒、暗黒の円山町、高級住宅街の松濤と、渋谷はさまざまな顔を持つ。

円山町のホテル街には、このような廃屋もあった。
円山町のホテル街には、このような廃屋もあった。

いろいろな顔を見せる渋谷。最後に。女性キャリアの先駆者であり優秀なエコノミストであった泰子氏に敬意を表し、冥福をお祈り申し上げます。
いろいろな顔を見せる渋谷。最後に。女性キャリアの先駆者であり優秀なエコノミストであった泰子氏に敬意を表し、冥福をお祈り申し上げます。

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