アイツはいいのに何で俺が言うとセクハラなの? Part2


昨今はお笑いブームで、「おもしろい男性」がモテる条件だと思い込むフシがあるらしいですね。

たしかにつまらないよりはおもしろいほうがよいのかもしれません。
しかし私は忠告したいのです。「おもしろさ」に便乗して、職場においてノリでセクハラ発言が許されると思うのならばそれは大間違いだということを。

 

お笑い界では、内容によってはセクシュアルなネタも、ときにおもしろいでしょう。

しかしそれはあくまで、ネタを言うMCの才能と腕ありきだということを忘れてはならないのです。実際に、腕のない芸人さんがご披露する未熟な下ネタのセクハラはしらけますし、視聴者に不快感を与えます。

かの萩本金一氏は、「下ネタとダジャレは素人にあげたネタだからプロがやっちゃいけないって、先輩から教わった」と語っていました。

老若男女が楽しめるネタを創作する努力をせず、下品な下ネタに逃げるのは素人だということのようです。
たしかに自己満足なセクハラジョークで「あ~あ……」とお茶の間をしらけさせている若手芸人さんは、少なからずおります。「ネタセクハラ」にはスキルが求められるのです。

フェミニストをスキルアップして匠の技にまで作り上げた及川光博のフェミニストが、「フェミプロ」ならば、セクハラネタを楽しく提供できる芸人は、いわば「ネタプロ」といえます。
彼らはセクシュアルなネタを、ただの自己満足で気分よく垂れ流しているのではありません。材料としてきっちり調理し、ビジネスとして提供しています。ネタとして完成されていてこそ「仕事」になるのですから。

 

「わからないからもう少し具体的に教えてよ」

男性にそう聞かれることがあるので、私なりに具体例をあげてざっくり分類してみました。お笑いに詳しいわけではありませんので、あくまで私が知っている範囲での分析です。

 

① タモリスキル

李澤(すももざわ)京平教授など「不特定別人物」を演じることも多く、自作キャラである他者にセクハラネタを言わせることで、現実とはかけ離れた舞台感を演出している。その完璧な観察眼と模倣で、空気を読みネタとして完成させている。独特の厭世観と悟りの境地。女性への押しつけがない。自分もいじる。

女性タレントの美しさに言及することもあるが、浮気やセクハラスキャンダルの一切ないタモリ氏のことであるから、不純な動機やいやらしさを感じさせない。「女好き」でない「人間力キャラ」が周知されているからこそ、許されるネタである。

 

② 綾小路公麿スキル

年配女性への毒舌が大人気なのは、特定の誰かをピンポイントとしているわけでなく、対象を大きくぼかしてディスっているから。

「自分がそれに該当するか否か」、女性に選択する余地を与えている。押しつけがない。自らを自虐ネタとして用い、自分も落とすことでバランスを取っている。

 

② 明石家さんまスキル

特定の女性を対象にいじることも多い。しかしなぜ不快感を与えないかといえば、女性のキャラを吟味して、塩加減、調味料を適切につかい分けているから。じょうずに調理して、みんなが楽しめる大皿料理として提供している。その塩梅、焼き加減は絶妙で、長年つちかった勘が冴える職人技。少しでもその加減を間違えれば、とんでもないことになる。しかし彼は経験とスキルで間違えない。観察力が長けている。「おとしめOKキャラ」しかおとしめない。

美しい女性タレントにセクシュアルなことを言うときは、周囲から突っ込みを入れられる準備をしてから発言しているため、それは「ギャグ」としてきれいに仕上がっている。

 

思いつくまま数例を挙げましたが、案外むずかしいことがおわかりいただけるのではないでしょうか。

ポイントはやはり「空気とターゲットを読む」「女性へ性を押しつけない」「自己満足NG」などだと思います。相手への配慮と共感力が求められる仕事ですね。

 

日本のお笑い界に君臨してきたモンスターたちを真似て、ゆめゆめご自分も「軽いお笑いキャラ」として、セクハラ発言が容認されるポジションを狙おうなどとは思わないでください。「ネタプロ」達のスキルは、一介の素人が真似できるレベルではありません。

とりあえず私は、そのキャラポジションに、「よいしょ、よいしょ♪」と鼻歌まじりで気軽に登ろうとしている男性がおりましたら、舌打ちしてベルトに手をかけ、満身の力を込めて引きずり下ろすつもりでいます。

もし男性の皆さまが職場の気軽なコミュニケーションとして「ネタセクハラ」を使う気でいるのなら、どうぞ今一度、お考え直しください。

たしかに「ネタプロ」に迫る稀有な才能の持ち主も、ときにいらっしゃるかもしれません。
しかし「アイツが受けているから自分も……」というお考えでしたら、恐縮ではございますが、イエローカードを出させていただきます。「ネタセクハラ」も女性も、それほど甘くはないのです。

 

このように忠告するのも、私の以前の上司に、ちょうどそのような「ネタプロくずれ」がいたからです。

「〇〇さ~ん、春場所出るの? あはははは、ゴメン、これ、セクハラじゃないからねぇ」
「△△さ~ん、今日何だかキレイだよ。あ、その場所だとライトでいろいろ隠れるからか」

このような感じでした。

彼はご自分のことを「憎めないお調子者」だと吹聴しておりましたが、実際のところ女子社員たちからは、「使えない横着者」と嫌われ、陰でコテンパンにののしられていました。

上すべりのセクハラネタを、ご自分おひとりで「おもしろい」とかん違いし、無駄に発信してまわりを凍りつかせていらっしゃるとしたらとても寒いものです。その事実に気づいてしまったら、私なら赤面して、アナと雪の女王の映画のごとく、自分で氷の階段を作って猛ダッシュで塔に閉じこもってしまうのですが、いかがでしょうか。

「キジも鳴かずば撃たれまいに……」

そのような故事ことわざも、日本にはございます。

撃たれ死にしないため、とりあえずビジネスシーンではお控えいただいたほうがよろしいでしょう。