面倒な人間関係から気づくこと~年齢の持つパワー~

■【面倒くさい人間関係あるある】

昔のことになります。ミーティング中に、Aさんが出した提案に打開策が見つからず、周囲が行き詰まっていました。
そこで私が少し違う提案を出したところ、それがAさんの提案よりも、おそらくブラッシュアップされたものだったため、責任者や周囲の同意を得た、というようなケースを想像してください。お仕事をされている方なら、よくある日常的な光景ではないでしょうか。

ちなみにAさんは、私よりもかなり年配の女性で、普段はそれなりに気さくに会話する関係でした。

しかし上記結論は、Aさんにとって、少し面白くない事実だったのでしょう。
そうはいっても、Aさんにしてみれば、「年下のあなたが私よりもより良い提案をして、公のシーンで周囲の同意や評価を得たのは、私としてはおもしろくないわね。」とは、言えません。

ではAさんがご自身のモヤモヤをどう解消させるかというと、後出しクレームをしてきたり、別の形で噴出させたりするわけです。
具体的には、ミーティング中ではなく、後から「でもあなたのプラン、あの部分は違うと思うのよね」と、公の場ではなく、個人的に言ってくるのです。

そう考えるのであれば、意見を共有したほうが皆のためになるのだから、ミーティング中に発信してくれればいいのですが、ひとたび私の提案で場が収まった以上、これ以上引き延ばすのは気が引ける、しかし自分としては面白くないし腑に落ちない。それで陰で個人的にケチをつけてみる、といったところでしょうか。

興味深いのは、また後日、仕事とはかけ離れた何気ない内容の中で、ソフトに私を否定してくるようになったということです。例えば、「あなたがいいと言っていたあの本、私にはイマイチだったわ」、「あなたがすごく薦めていたあそこのランチなんだけど、私には味付けがちょっとね。もっと美味しいと思ってた」など。
おそらく無自覚(意図的にという見方もできなくはないですが)に、別のところでチクチクと「無難な攻撃」をして、自分の不快感情の穴埋めをしているようなのです。

「気のせいじゃないの?」と思われる方もいるでしょう。
そうかもしれません。
人間関係の微妙な雰囲気というのは、当人にしかわからない原因や、ようやく嗅ぎ取れる程度の軽微なニュアンスがありますから、明確な答えは出ないでしょう。しかし私は、ミーティング以来しばらくの間、今までのAさんの態度から異なる雰囲気を感じたのは事実です。

■【「非同意」に不慣れな日本人】

じつは私は、自己顕示欲から発せられるこの手の狭量さを、とてもくだらないと感じる人間です。

よりよい提案が出されたのならば、誰のものであっても、全体のために結果オーライと思えばよい。それを割り切れないのは器量が小さく、全体の利益に対して俯瞰ができない、視野の狭い思考回路だと、そこに悪い意味で自我の臭みを感じ、うんざりしてしまうのです。

しかし私のような考えをする人はかなり少数派で、一定数の方は、類似のシチュエーションにおいて、Aさんと似た感情にとらわれて、似たような反応をしてしまうようです。

特にムラ社会に生きる日本人は、「自分と違う意見」を「自分への攻撃」と受け止め、過剰に反応するところがあるのでしょうか。これはムラ社会の中で生き、同調圧力に慣れきった日本人の悪しき特質であるともいえるでしょう。

■【年をとるということは無条件で「同意」される環境が増えてくるということ】

また、私がこの事案で感じたのは、ひとつ、「年齢という権力」による危険性です。Aさんは、責任者のポジションにはありませんでしたが、チーム内では一番の年長者でオピニオンリーダー。そのため普段から、Aさんと異なる意見を述べる人はほとんどいませんでした。

Aさんの反応が、元来の性質によるものなのか、年齢によるものなのかはわかりません。しかしAさんは、相手が「かなり年下の私」だから、余計におもしろくなくて、このような言動をとったというのは、可能性として考えられます。

明らかなのは、年を取るということは、それだけで無自覚の「権力」を得ているということです。無条件で「同意」される環境が増え、それゆえに他者が自分に服従する環境が当たり前になり、それがゆえに他者からの「非同意」を、自分の中で許容しにくくなってくるという心境です。このようなメンタルが、「頑固ジジイ」や「お局」を作り出す背景にもなり得ます。

■【客観的に自分を見ること。「義理の笑顔」や「お世辞」を過信しないこと】

私は、自分がある程度の年齢に達した今、そのことにとても気をつけています。

自分が持つ「年齢のパワー」を自覚し、現在、笑顔で素直に接してくれている20歳以上も年下の学生たちが、年上の私相手に気を遣っていて、決して素直に本心をさらけ出しているわけではない、ということを認識しています。

ですから仕事の延長上、皆で食事することはあっても、決して自分からは、異性はもちろんのこと同性も、個人的にはお茶にも食事にも誘いませんし、必要以上に踏み込んだ話題もしないようにしています。若い人にしてみれば、怖い年配の女性との時間など、うっとうしいだけで決して楽しくはないだろう、と慮っているからです。

「そんなことないですよ、有馬さん本当に楽しいし、個人的にもまた一緒に食事したいですよ」

そういってくださる方がいたとして、それが自分と同等、あるいは上の立場の方であればありがたく受け止めますが、自分よりも若年で、下位のポジションにいる人がそう言ってくださった場合、ほぼ100%、私はそれをただの「お世辞」として受け止めます。

なぜならば、私自身が、若いときに「年齢の抑圧」という権力の行使に、山ほど煮え湯を飲まされてきたからです。年齢のパワーが垂れ流す抑圧的なハラスメント(特にセクシュアルハラスメント)を浴びるように受け、本心を言えず、我慢を強いられてきた身としては、自分がされてきた嫌なことは他人にしてはいけない、次世代につないではいけないと思っているのです。

ですから仕事上のパワーハラスメントや、特にセクシュアルハラスメントの事案を目にするたび、加害者の傍若無人で楽観的な自己中心的視点に、ただただ驚愕するばかりです。
加害者も、若いときには、少なからず抑圧を受けてきた身であろうに、いざ自分が加害年齢となったとき、その不快感情や弱者的立場を忘れてしまうのでしょうか。あるいは、抑圧されて損をした若年時代を取り戻してやれ、ということなのでしょうか。

■【恥ずかしい「勘違い」には自分から気づく】

もし私が男性で、ある程度の年齢になったら、若い女性が自分をどう思っているかを悲観的に、そして客観的に、厳しく査定します。

すべてに当てはまるわけではないということを前提として、誤解を受けることを承知で極端な言い方をしますが、オヤジなんて、若い女性からしてみれば、存在だけで嫌にきまっています。

それに気づけず、自分だけが楽しい話題を得意満面まき散らし、相手を自分に都合のよい「おんなのこ」扱いし、彼氏だの化粧だの髪型だの女子力だの性体験だのとセクハラ視点で接し、あまつさえ反撃できない弱者の「無抵抗」を「同意」あるいは「自分への好意」などと恥ずかしい勘違いをして、あろうことか地位や年齢という権力を「役得」と捉え蛮行に及ぶのは、誠に野暮で自己中心的ですし、つまるところ根本的な人間性の品格に問題があると思われても致し方ないのではないでしょうか。

※参照『やりきれない・・・旧知の広河隆一あまりにも情けないセクハラ! 謝罪してももう手遅れ』

■【無自覚に保有している 性的強者パワー ✕ 年齢パワー】

セクシュアルハラスメントは、未だ男性加害が圧倒的に多いのは周知の事実です。

それはこの現代社会においてさえ、未だ男性のほうが、生まれながらに「性的強者パワー」を持ち、その権力を行使しやすいからです。そして男性の多くは「性的強者パワー」に加え、「年齢パワー」や「ポジションパワー」も付着し、年々、無自覚のパワーが加算されていきます。

セクシュアルハラスメントを語るとき、「気にしない女性だっている」「女性が自己決定として性体験豊富になり、そういう女性が多い大学という意味だとしたら、(そのランキングの)何が悪いんだろ」「性サービスを職業にしている女性だっている」――――――などと、いつまで経っても自己中心的でズレた発言をする男性が多いのは、属性による条件格差―――男性が生まれながらに持つ、性搾取側の「性的強者パワー」が、いつまでも「上から目線」の特権を手放さず、それが女性の反撃や非同意を封じ、今も社会進出や好ポジションから駆逐しつづけているという事実から目をそむけ、自身にとって都合の悪い見方に蓋をしているからでしょう。

スタートラインから平等ではないのです。

女性が20メートルも遠いところからスタートを切らされているのに、そのハンデを「存在しないもの」として扱い、我が物顔で自己タイムの素晴らしさに陶酔している、世の中を片目でしか見られない、幼い「お殿ちゃま」達を相手に、性的受動側のハンデ――――――ジェンダー・社会構造・意識・風潮・慣習、女性に課せられているあらゆるハンデというものをどのようにわかりやすく教えてあげるべきか。その手間と煩雑さに、女性は毎日、冷たい苦笑いをしているのです。

■【「女性という属性」から、どのようなわずかな旨みでも搾り取ろうとする日本社会】

とりわけ日本社会というのは、あきれるほど女性に対して無礼で、非紳士的です。「女性という属性」から搾り取れる、どのようなわずかな旨みにでもハイエナのように下品に群がり、女性の性的尊厳を保護することにもサポートすることにも無関心で、ただ貪るのみの性搾取に躍起になり、男性は自身の「年齢パワー」にも「性的強者パワー」にも、共に無自覚です。

すでに多くの他国女性が当たり前のように享受している、女性を尊厳ある人間存在とみなし、ジェンダーハンデを女性視点で是正し、そのうえで対等なパートナーとして男女共に社会を構築していきましょう、という紳士性―――いわば思いやりと品格が、驚くほど欠如しているのです。

視野が狭くて自己中心的。器の小さいケチな支配欲。そしてあらゆるシーンで下品なポルノ視点。これが多くの日本人男性に共通して見られる、ひとつの文化的な特徴ではないかと感じています。

■【すべてのパワーは自覚して自己管理を】

厳しい意見かもしれませんが、中年を自覚しましたら、「若い女性はほぼほぼ自分を嫌い」くらいの心構えでいたほうが、日本社会では安全圏でいられると思います。
私自身もそうでしたが、特に日本人女性は、嫌悪感を表に出さずしまいこんでしまいがちで、タンス預金ならぬ「タンス不満」(あるいは「タンス殺意」)をたっぷり貯め込んでいます。いつか引き出されて、白日のもとにさらされることのないよう、ご自身に疑いを持つことをお勧めします。

年齢を重ねれば重ねるほど、自分に意見できる人は減っていきます。そして年下に対しては、好き勝手に、感情的に、自由に振る舞えるようになります。そのパワーには自分で気づき、自分でセーブしなければなりません。それが人間としての品性であり思いやりであり、より多くの時間を過ごし、経験を積み重ねてきた人生の先輩として、後進に示せる背中でもあります。

年齢を重ねるにつれ、他者の気持ちや立場が汲み取れるようになり、人間性も美しく研磨された。そのような人生であったと、晩年、自分を振り返りたいものです。

 

 

【有馬珠子の書籍はこちらから】
↓ ↓ ↓ ↓ ↓

ブラックを乗り越えた女性たち: 私たち、今でもじゅうぶん「輝いて」います

 

マイルドストーカーVS溝口さんの話: 趣味、ストーカー

 

目から鱗がポロポロ落ちるセクハラの話: これが意識の最前線!

 

あなたの周りに潜む善玉サイコパス: 共感力の個人差

 

あなたの周りに潜む東電OL予備軍: 本書は現代女性に捧げる蜘蛛の糸である

(悩んだら、ココに相談 ↓ )
「働く人のセーフティネット」は、セクハラ、パワハラ、過重労働、サービス残業などの解決を手助けする、無料労働相談会を実施しています。

(ご協力ありがとう!)
ストレングスファインダー×モチベーションマネジメントで 強みを発掘して、153%活かす 個人からチームまで、強みと魅力を伝える専門家 スピカデザイン