石原まき子さんにお会いしたときのこと


俳優の石原裕次郎氏が生きていれば、今年80歳だという。
先日のテレビでニュースで追悼記念特集が組まれ、華々しい映像や、早世を惜しむファンの声が放送されていた。

番組の後半、奥様である石原まき子夫人もインタビューに答えていた。
「私の中では時間が止まったままなんです。80歳の裕さんなんて、想像できませんものね。私にとっての裕さんはまだ52歳の姿のまま。ずっと生き続けてているんですよ」
穏やかに上品に語るまき子夫人を見て、私はテレビに釘付けになってしまった。

何を隠そう、私はまき子夫人とお会いして、会話を交わしたことがある。

お会いしたとき、私は彼女が石原裕次郎氏の奥様だとは知らなかった。出会った場所は百貨店。シチュエーションは、販売員と常連客。

私はわずか1年半ではあるが、百貨店の高級時計・宝飾売り場で販売員をしていたことがある。
そこにある日、まき子夫人がお客様として訪れたのだ。
まき子夫人は「外商顧客(いわゆる上客)」であり、百貨店にとっては特別のお客様だった。

私はまったくご本人を存じ上げず、一般のお客様と同じように、のん気に「いらっしゃいませ~」と笑顔で近づき、時計の説明をし始めた。
まき子夫人が他の海外ブランドの時計もご覧になりたいとおっしゃるので、私がフェンディのケースにご案内していた途中で、ほかのスタッフが気づき、すっ飛んで来た。そしてまき子夫人をかっさらってご案内を引き継いだのだった。

まき子夫人の周りには、あれよあれよという間に、百貨店のお偉いさんとベテランスタッフで人だかりが出来た。
時計・宝飾売り場というのは年配の女性が多く、当時三十代後半の私でさえ、一番若い部類のスタッフだった。
しかも入社1年たらずの新人では、ベテラン販売員の先輩方に近づけるはずもなく、60代70代のお局スタッフにブロックされた私は、なすすべもなく、遠巻きにぽつんと、黒山の人だかりに囲まれたまき子夫人を見守っていた。

まき子夫人は結局、国産の時計と、フェンディの時計をプレゼントとして購入されたのだが、私が彼女を「ただものではない」と感じたのは、彼女の気遣い、気配りの素晴らしさだった。
まき子夫人は、購入する時計が決まった途端、しきりに最初ご案内した私のことを気にかけ、周囲にアピールをしてくださったのだ。

「あのね、あそこにいらっしゃる方(私のこと)が、最初にご案内してくれた時計なんですよ。ほら、あそこに離れて立っていらっしゃるでしょ、あの彼女が、私にこの時計を最初に紹介してくださったの」
まき子夫人は、一生懸命、周囲のスタッフに私の存在を説明した。

まき子夫人はおそらく、知っていたのではないかと思う。
時計・宝飾売り場において、販売した品物の点数や価格が、販売員の成績としてカウントされるということを。

どのようにして知ったのかは定かでない。
まき子夫人ご自身も、「北原三枝」のお名前で、女優として早くから活躍されていたことを鑑みるに、一般の販売業務事情に精通していたとは思えない。それを斟酌できるということは、なみなみならぬ周囲への細やかな洞察力、異なる立場の他人への想像力、そして「裕次郎の妻」として恥ずかしくないよう自己への戒めであろうか。

私のような末端の人間に、ここまでの気遣いを見せるまき子夫人の人格の素晴らしさを思うたび、私は自分の小ささに身の縮む思いがする。

私は世代的に、俳優・石原裕次郎を知らないが、彼が生涯の伴侶に選んだまき子夫人という女性を通して、裕次郎氏がどれほど素晴らしい男性だったか分かる気がする。
日本中を熱狂させたのは、単なるルックスや演技力、センスだけではなかったはずだ。男性としての器の大きさ、温かさ、気配り、優しさ、繊細さ、大らかさ、それらをひしひしと感じるのである。

まき子夫人にとっては、自然に身についた、通常の気遣いをしただけなのだろう。
しかし私はこの出来事を、要所要所で、案外人生の拠り所にしていることに、最近気づいた。
自分の心がすさんでどうしようもなくなったとき、ぐっと腹に力を入れて、まき子夫人のサングラスの奥の、上品で慈愛あふれる瞳を思い出す。
まき子夫人の愛情、思いやり、気遣いを心の糧にして、ささくれだった心を、なめらかに穏やかにリセットするのだ。

先日テレビでインタビューに答えていたまき子夫人は、変わらず美しかった。どんなに年齢を重ねても、彼女は永遠に美しい人である。
その「人」としての輝きは、裕次郎氏のところに行くまで、決して衰えることはないだろう。

 

 

 

(有馬珠子のあめぶろ)
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