男はまだわかってない「人としての善意を女性性として消費される不快さ」


「男ってさ、こっちが善意から親切にしてやったことを、女として利用する卑怯さがあるよね」

これは以前、わたしの知人が言ったせりふです。

ことの経緯を説明しましょう。
知人はある日、腰の曲がったおじいさんがきょろきょろと住所を探しながら、ヨボヨボと歩いているのを見て、気の毒に思い、「どちらかお探しですか、ご案内しましょうか」と声をかけたそうです。
すると老人は「すみませんねえ」と礼を言い、「このあたりだとは思うんですけど、記憶をたよりに来たから迷ってしまって」と、しばらく友人と歩き続けたそうです。

なかなかみつからないようなので、住所や特徴をたずねたところ、その老人は知人の反応を楽しむように、上目遣いでニヤニヤ笑いながら言いました。
「〇〇っていうお店。知ってる? 女の人がサービスしてくれるお店。××や△△もしてくれるんだよ」
老人の探していたのは風俗店でした。

「親切心なんか出して声かけてやるんじゃなかった!」
知人は思い出してまた腹がたったらしく、激怒しながらわたしに話しました。

 

これを「スリセクハラ」といいます。
女性の人としての親切心を奇貨として、スリのように一方的に女性性を消費・利用するセクハラです。
上記ケースは職場ではありませんが、実際このようなシチュエーションは、親和性や人間関係をキープすることが求められる職場においてよく起こりがちです。
その知人は鈴木京香によく似た、色白でふっくらとした日本美人でしたので、この手の被害は本当にたくさんあったようです。

 

もうひとつ、わたしの以前の職場の上司、M田の例をご紹介しましょう。彼は以前、私がセクハラ訴訟をした会社の上司のひとりです。

その会社に在籍していた頃、会社の近く、南青山の裏路地におしゃれなカフェがありました。
ご飯がとてもおいしくて、また若い女性オーナーがとても感じの良い、ハキハキとした朗らかで素敵な方でしたので、会社としても二~三回、そのお店を使っていました。

ある日、会社の酒席をそのカフェでおこなうことになりました。
案の定セクハラM田は、べつの男性役員を相手に、ゲラゲラ笑いながら、傍若無人な態度で、下品な猥談をしゃべり散らかしています。

女性オーナーは、盛り上がっていると感じたのか、「楽しそうね、何の話してるの?」とニコニコしながら給仕中、M田に話しかけました。

店内はちょうど満席で盛り上がる時間帯。
スピーカー近くの席はジャズが流れており、声が聞こえにくかったようで、女性オーナーはM田の声を拾おうとして、かがんで耳を寄せました。
するとM田は、下卑た笑いをうかべながら、「女が使うバイブの種類についてだよ。どれだけ知ってる?」と、女性オーナーにたずねたのです。

 

わたしは恥ずかしくて申し訳なくて、顔から火が出そうでした。

このとき、今まで朗らかにニコニコ笑っていた女性オーナーの顔が、M田のせりふを聞いた途端、サッと青ざめて石のようにこわばった表情を、わたしは今でも忘れることができません。
人としての心のふれ合いやコミュニケーションを求めて距離を縮めてきた彼女のヒューマニズムを逆手に取り、女性性という商品として、勝手に消費する。
悲しくなるような浅ましいスリセクハラです。

このお店はクラブでもキャバクラでもなく、表参道駅近く、南青山のおしゃれカフェです。
カフェ女性オーナーに対してこの態度……ですから、M田の部下であるわたしへの日頃の態度は、みなさまの想像を超えてなお、あまりあるものでした。だからこそ訴訟にまで発展したのですが。

 

ちなみにこの上司M田は、実家は横浜の開業医というおぼっちゃんです。中央大学法学部を中退した人物でしたので、それなりの知性やバックグランドは持っているはずの男性といえるでしょう。

外見も、ごく普通に「人柄のよさそうな男性」と判断できる容姿でした。おそらくわたしも、ただの取引先相手として、表面的な会話しか交わさずにこの話を聞いたなら、「まさかあの人が……!」と、仰天したと思います。

一見まともに見える男性が、平気で善意をふみにじるスリセクハラをしてくる。このような失望感を、女性は何度も味わっているのではないでしょうか。

 

わたしもこの手の話は枚挙に暇がないのですが、はらわたが煮えくり返った、つい最近の出来事をご紹介しましょう。

わたしは前職の職場でパワハラにより体調をくずし、労災申請をしました。その際、たったひとりだけ証言をしてくれた男性がいました。
誰もが証言を拒否するなか、はては偽証までする関係者のなかで、一人だけ真実を語ってくれた。このことをわたしは本当に感謝していました。
「人として社会人として、一度きちんと御礼を言っておかなかればならない」
そう思い、その方の住所先に向かって、ひとり手を合わせていたものです。

しかし彼は、手土産持参で訪れたわたしに対し、まったくのホステス扱いという、残念な態度で期待に応えてくださいました。
こちらが恩義を感じているのをよいことに、社外で人目がないからといって、セレブ自慢や、女性を若さや肩書で値踏みするような発言や、「珠子ちゃん」と勝手に馴れ馴れしい女の子扱いをし、恋愛遍歴や指向を尋ね、あげくのはてに性欲の強さを聞いてくる……という始末です。

これはスリセクハラというより、完全な「セクハラ」ですが、人間としての感謝につけ込んで、というポイントが加算されるぶん、普通のセクハラ以上に性質が悪いといえるでしょう。

 

 

痴漢やセクハラをしかけてくる男性というのは、「こいつは言えないだろう、言いふらさないだろう」とナメてかかってくる場合が多いのです。

だからこそ、セクハラを下火にするためには、どのような内容でも明らかにしていく。物騒な言い方をすれば、「あの人こんなこと言う人だよ」「こんな発言されたけどあり得ないよね」と、いいふらして、羞恥心と自覚を呼び起こすことは有効です。
今はSNS等、情報通信の発達した時代です。グループネットワークも盛んですから、女性はもう黙っていませんし、黙っている必要もありません。

情報共有・情報公開は、ハラスメント撲滅のための、ひとつの有効なツールであることをお伝えしておきます。
情報共有していくことで、「こういうことを言ったらマズイ」という加害者への抑止力が生まれますし、「こういうことを言っちゃいけない」と悩んでいた人が、被害体験を発信できる、土壌と雰囲気づくりにもつながります。

また、「具体例をひとつでも多く知る」というのは、相互理解に資する有効なテキストとなりますから、お悩みの方は、どんどん発信していただきたいと考えています。
「体験例」として、匿名でわたしにご連絡いただくことも歓迎します。

 

今回は、「人としての善意を女性性として消費される不快さ」について、具体的にご説明いたしました。

これを「不快」と気づかない男性のいかに多いことか。
日本の男女共同参画の夜明けはまだまだです。

 

 

(ピリ辛好きなあなたに。25万スコヴィル↓)
有馬珠子の「働く人のハラスメント川柳&短歌」

(有馬珠子のあめぶろ)
共感力を高め、人間力でリンクする。多様性を認め、作業効率のよい職場を。セクハラ・パワハラ・モラハラをなくす、職場のハラスメントゼロ活動にご協力ください!

(悩んだら、ココに相談 ↓ )
「働く人のセーフティネット」は、セクハラ、パワハラ、過重労働、サービス残業などの解決を手助けする、無料労働相談会を実施しています。

(ご協力ありがとう!)
ストレングスファインダー×モチベーションマネジメントで 強みを発掘して、153%活かす 個人からチームまで、強みと魅力を伝える専門家 スピカデザイン