アイツはいいのに何で俺が言うとセクハラなの? Part1


たいへん恐縮ですが、「それはあなたの日頃の行いと心根(こころね)が……」と申し上げるほかないでしょう。

けだし、今でもときどき男性から聞かれます。

「なんでアイツが女子のメイクをほめると『も~う、〇〇さんたら~』なのに、俺が同じこと言うと『セクハラやめてくださいよ!』って、コメカミに青筋立てられるんだよ!」と。

先日もテレビ番組で、「どうせイイ男が言えばセクハラじゃないんだろ?」と、男性タレントが司会者に噛みついておりました。やはりこのあたりの整理がまだよくできていないようです。

今までの講義からもお分かりいただけると思いますが、女性がセクシュアル発言に対して不快感を覚えるか否かは、「女性を人間として尊重する気持ちがベースにあるか」の存否にかかっております。

常日頃、しつこく忠告しています。「性・女性」だけではなく「人間・女性」もいるという事実を認識できているか。確証バイアスにより、「人間・女性」を「性・女性」として勝手に振り分け、一方的に自分の希望通りに性存在として扱ってしまっていないか。

これがセクハラになるかならないかの分かれ道です。

 

この件に関してわかりやすい例として、私はよく石田純一氏と及川光博氏をひきあいに出します。

たとえば会社で石田氏や及川氏に、「今日のその服ステキだね!」と言われて、「不快なセクシュアルハラスメント」だと訴える人は、どれほどいるでしょうか。限りなくゼロに近いと思われます。かなり手厳しい女性だったとしても、せいぜい鼻で笑って流す程度ではないでしょうか。

ところがです。

いつもキャバクラの雑誌を広げ、職場のPCで風俗サイトなどを見ている会社の上司が、「〇〇ちゃん、今日のその服ステキだね~?」と、にやにやしながら言ったらどうか。完全にアウトですね。

ここまで極端な上司は論外にしても、自分が女性に「その服ステキ」のせりふを言って、相手の女性を不快にさせない確信があるかどうか。一度脳内で三十五人くらいのご自分を集めて、ああだこうだと、「自分会議」を開いてみるとよいかもしれません。脳内をさぐってみますと、意外な「自分」が存在するものです。

自分が女性にセクシュアルな発言をしたとして、チラリとでも不信感を抱かせないほどに徹底して煩悩レスか、あるいは煩悩があったとしても、完璧な演技で隠し通せているのかを。複数視点で客観的にご自分を精査してみてください。

あなたの一言が「セクハラ発言」として地雷を踏むことになるのか、はたまた「フェミニスト発言」として受け入れられるか。女性の反応は、自分の日頃の意識を映し出す姿見だといえるでしょう。

一応、警告させていただきます。

たとえ現実がどうであれ、たとえ悪気がなかったにしても、ご自分を過信するのは危険だということを。

親しくない他人、そして組織や会社などオフィシャルな場面では、ビジュアル的なことに言及する発言や、少しでも性的な内容にひっかかる発言、プライベート模索型の発言は、一切しないほうがよろしいでしょう。それが賢明です。

石田純一氏や及川光博氏は、職業キャラとして認知された「フェミニスト」です。それを素人男性が模倣なさるのは、いささか危うい冒険だと申し上げておきます。

なぜここまで厳しく戒めるかといいますと、私は実際、及川光博氏の「プロぶり」を間近で見たことがあるからなのです。

 

以前私が勤めていた職場のビルは、一部フロアスペースが、時おり著名人のサイン会場に使用されていました。ある時、及川氏の新刊出版に際し、サイン会企画の会場としてそこが選ばれました。

数日前から、女性スタッフたちはそわそわ。

サイン企画自体は、書籍を出版した会社がおこなうもので、ビルに勤める私たち他会社社員たちは、サイン会とは何の関係もありません。ただ、裏口や企画会場までの通路など、関係者共有スペースでわずかばかり接触可能、というだけです。

当日、裏口扉を通り、スタッフが荷物を搬送作業するための地下室に、颯爽とあらわれたミッチー。キャッキャキャッキャと言いながら、やや遠巻きに、ちょうちょうのように彼の周りをウロつくビル勤務の会社女子たち。もちろん彼女たちは、彼の書籍を買ったわけでもなく、サインをいただく資格があるわけでもない、ただの「ビル内通行人」であり、部外者です。

しかしミッチーは指二本でちゃっとポーズをとり、にっこりとほほえみ、ご自身のほうから制服姿の女性スタッフたちに話しかけました。

「は~い、制服ベイベー、ステキだね!」

このように言い、すべての制服女子たちに愛敬を振りまき、腰を低くしてそれぞれに握手し、きっちり業務外ファンサービスをこなし、軽やかに手を振りながら控室に消えていきました。

彼にはこの後、メディア相手のインタビューと、二時間ちかく握手とサインをし続ける本当のファンサービスが控えていたので、このときは一番緊張する、わずらわしい時間だったはずです。

しかしミッチーは、サイン会とは実際関わりのないすべてのビル勤務の他社女性スタッフに対して、完璧なまでのフェミニストぶりを披露してくれました。

 

ちなみに今まで、ほかの有名芸能人やアイドルタレントも何人か同企画で来場したのですが、そのほとんどは、ここの地下の搬送作業のための共有スペースでは、ムスッと感じ悪く、「一般人が気安く話しかけるなよ」といわんばかりにぶっきらぼうでした。帽子を目深にかぶり「よろしくお願いします」も言わず、さっさと通り抜け、一刻も早く控室に入ろうとする方が多かったように記憶しています。(もちろんすべてではなく、感じの良い方もいらっしゃいましたが)

及川光博氏のフェミニストぶりは徹底していました。プロ中のプロです。フェミニストプロ、フェミプロといって差し支えないでしょう。

 

そこまでプロ意識がある男性は、少ないのではないでしょうか。

徹底してプロになり切れないのならば、性的な発言には触れないほうが安全です。なぜなら中途半端に褒めることが、じつは一番、環境型セクシュアルハラスメントに抵触しやすい、危険な言動だからです。

「フェミニスト」として女性を褒めたいならば、少なくとも及川光博氏レベルにまでレベルアップしてから臨んでいただかないと、身を亡ぼすことになりかねません。

それができないのでしたら、性的なことをカケラも口にせず態度にも出さず、ひたすら煩悩レスに見せるための紳士的演技を磨くことに、日々精進すべきではないでしょうか。

窮屈なようですが、実はこれこそが、男性が社会の中で自分を守る最良の方法だということを、ご教示させていただきます。