「ルミネセクハラCM」


少し前にネット上で話題になりましたから、ご存じのかたも多いと思います。
「ルミネの働く女性たちを応援するCM」がたいへん興味深いものでした。
予想外の炎上に焦ったルミネは、相当数の動画を削除したらしいのですが、私はわずかに残存しているものを拝聴しました。

 

CMでは、出勤中の女子社員に、男性先輩が後ろから声をかけます。

「なんか顔疲れてんなー、残業?」
「いや、普通に寝ましたけど」
「寝てそれ?! アッハハハハハハハハハ……」

(男性先輩、社内のキラキラ女子に)
「おー、髪切った?」
「巻いたたけですってー」(にこやかに笑顔で去る)
「巻いただけですってー…、やっぱカワイイなぁ、あの子」
「そうですねぇ、いい子だし」

少し落ち込んだ感じの女子社員を見て、男性先輩は言います。
「大丈夫だよー、お前とは需要が違うんだから」
「………需要…?」

最近、サボッてた? の心のナレーションとともに「変わりたい? 変わらなきゃ」という、購買を促すテロップが出ます。

 

いかがでしょうか。

今までの私の講義から、このCMのどこが突っ込みどころであるか、容易におわかりいただけるのではないでしょうか。

この内容が「働く女性たちを応援」すると考え、「変わりたい、変わらなきゃ」と奮起した女性がルミネに買い物にくると考えたのならば、ルミネ広報担当者の頭のネジは、失礼ながら相当、緩んでいらっしゃるのではないでしょうか。

私などは、企画発案者と企画を通したルミネ責任者のお名前を、すべて公開していただきたいと思ってしまいました。産直野菜の生産者よろしく、「私が自信をもって通しました!(by東京都ルミネ広報部企画〇〇部長)と、笑顔ポーズ写真つきで。

そのうえでもう一度流していただくということはできないでしょうか。アクセス数だけは稼げるかもしれません。しかしお気の毒ではございますが、季節の商戦の稼ぎはあきらめたほうがよろしいでしょう。

 

日本の女性たちは、まだまだ男社会を過大評価していたようです。
私たちは心のどこかで、「ここまで社会が成熟したのだから、根本的な意識改革はむずかしいにしても、大多数の男性はセクハラの何たるかを理解し始めている」

そのような希望を抱いてはいなかったでしょうか。残念なことに、それは幻想だったようです。

すでにご理解のみなさまは、いい加減うんざりなさるかもしれませんが、一応説明させてください。

職場で女性を性的評価すること、値踏みすること、セクシュアルな存在として扱うことは不当なセクシュアルハラスメントです。男性側からの一方的な女性性への評価、性的優位者であるという「上から目線」は勘違いであり時代錯誤です。知性と教養の欠落した女性蔑視言動はつつしむべきです。

 

男性の方にもご理解いただけるよう、「ルミネセクハラCM」を男性バージョンに作り変えてみました。

「おはよー」
「あ、おはようございます」
「何かカラダ、メタボじゃない? 最近残業で、ジムも行けてない?」
「いや、普通に行ってますよ」
「行っててそのぶよぶよお腹ぁ? アッハハハハハハハハハ」

(髪の毛フサフサで高身長の引き締まったイケメン)
「(さわやかな笑顔で)おはようございます」
「あ、おはよー。ねぇ、今日胸板ガッチリしてない?」
「ジャケット変えただけですってー」
「変えただけですってー、か。やっぱクールだわぁ、あの人」
「……そうですねぇ、仕事もできるし」

(少し落ち込んだ感じの男子後輩を見て)
「大丈夫よー。あなたは私たち女子社員のストライクゾーンにも入ってないんだからー」

ストライクゾーン……?

変わりたい、変わらなきゃ
ルミネも変わる

NEW SHOP OPEN

 

お楽しみいただけましたでしょうか。
このような価値観の女性たちが政治・社会の中枢を担う国、ニッポン。
男性にとってはさぞや生きやすい、素敵な国なのでしょうね。

 

さて、せっかくですのでもう少し深く掘り下げてみましょう。

「職場の華」と「イマイチの女性」。

男性の性質として、女性をそのような視点で見てしまう気持ちはわからなくもありません。しかし表には出さないのが、職場のルールでしょう。ましてや相手の容姿をおとしめるような感想をご本人にむかって言及することは、性別を超えて、人類としてのマナー違反です。

女性へのセクシュアルな感想は、自分の頭の中だけにとどめておいてください。セクシュアルハラスメントというのは、顕在化せず相手に伝わらなければ、それはセクシュアルハラスメントとして成立しないのですから。

しかしこのようなCMを制作するという点で、ルミネは企業レベルにおいて大変なマナー違反を侵し、意識の低さを露呈してしまったといえます。マナー違反というよりは、もはや男女雇用機会均等法等に抵触しているのですが。

昔からルミネを愛する顧客のひとりとしてあえて苦言を呈したいのですが、このようなCMを制作なさるということに、企業として「恥」を感じていただきたいのです。

今回の一件で、ルミネの評判はガタ落ちです。季節商戦だけでなく、今後も厳しい経営が見込まれると考えたほうがよろしいでしょう。

でもだいじょうぶ。
あなたは伊勢丹や三越とは「需要」が違うんだから。そう落ち込まないで。