●「共感力の個人差」~あなたの周りに潜む善玉サイコパス~Part11


(つづき)
善玉サイコパスは、表層面から、深みへと潜ってゆくことをしない。深淵部分があることを知っているとは思うのだが、かたくなに目をそらして現実と向き合うことを避けたがるのは、嫌な思いをしたくないからだろうか。
あるいは、「自分はそこまでの深い部分とは関係ない」と思っているからか。

しかし嫌なものを見たくないのは皆同じだ。キタナイつらい現実など、本当は誰もが見たくない。

それでも現在の私たちの生活は、先人たちがひとつひとつ傷を負いながら獲得した結果のうえに成り立っている。それを享受している私達自身が、何かしら未来に還元してゆきたいと願うのは必要なことではあるまいか。たとえ一人の行動が微々たるものであれ、意識を向け行動に移すことはとても尊い。

しかし善玉サイコパスは、その好機に恵まれながらも核心部分をシャットアウトする。そしてなぜか表面的なものや机上の空論にシフトする傾向がある。

 

Kさんが参加しているホームレスサポートのボランティアだが、ほかの団体と同様、専従スタッフがいる。
専従の方たちはスタッフ管理、予算、企画など一連の活動を担い、計画的に会を運営している。

専従以外のボランティアとしては、会社員や学生が参加している。とくに夏季冬季休暇の時期ともなると、学生の新人ボランティアがインターンシップで手伝いに来るので、現場はいっきににぎわう。

私はある日、共通の友人Rさんから誘いを受けた。
新人スタッフの学生さんが、私の仕事の話を聞きたいというので、炊き出しボランティアの日に少し顔を出せないかということだった。

久しぶりに一等地のキリスト教教会に顔を出し、Kさんとも久しぶりに再会することとなった。

 

ちょうど炊き出しクッキングがはじまったところだったのだが、私は訪れて数分で、回れ右をしてソロリと帰りたくなった。
なぜならKさんは、学生と思しき新人ボランティアたちに、あたかも自分が専従のコアメンバーであるかのように、先頭を切って新人に説明し、自分勝手に指図をし、セレブクッキングの責任者のように振る舞っていたのである。

あまつさえKさんは専従のメンバーたちに、「こういうの足りなくなると困るから、チェックする当番を設けたほうがいいんじゃない?!」など、なぜか上から目線で自由気ままに言いたいことを言っていた。Kさんは暗黙のルールや立場、上下関係というものもまた、読み取ることができないのだ。

さらに不思議なことにKさんは、まるで自分がホームレス事情を知り尽くしている「権威者」のように、新人メンバー相手にとうとうと社会論拠を語っていた。

 

私はふっと気が遠くなるのを感じ、白目のまま一瞬気を失いそいうになった。
たしかにKさんにとってボランティアは、「楽しいセレブクッキング教室」なのかもしれないが、他のメンバーにとっては真剣に人助けをしている、自分たちの大切な心の聖域であり「仕事」でもある。
暇つぶしに好きな時だけ顔を出す、「キレイなとこだけ偽善ボランティア」のKさんが、コアメンバーの指示を仰がず、我が物顔で指揮をとり、彼らに指示さえ出し、さらには机上の空論まで語る。

せめて、嘘でもいいから少し気をつかって欲しい……。

そう思っていた矢先、背後に殺気を感じておそるおそる振り向くと、やはり数人のスタッフが、Kさんの傍若無人な様を能面のような顔で見つめていた。

お願い、気づいて……。
しかしKさんは気づかない。なぜならそのような空気感に気づかないKYこそが、善玉サイコパスなのだから。

 

私は不穏な空気の中、隅でぼそぼそと味のしないピラフとトン汁を食べた。もちろん本当はとてもおいしい食事なのだが。

何だか雲行きがあやしいぞ…。大シケにならなきゃいいが……と思っていた矢先、スタッフの一人がジャブを打った。

「Kさん、最近は毎週、参加してくれてますね。昼食後もすぐに帰宅されないし、皆さんが配給に行っている時間もここでおしゃべりしたりお茶を飲んだりしていますよね。もしお時間に余裕があるのでしたら、そろそろ他のサポートにも手を貸してもらえないかしら? 特に衣類の配給・交換なんかは人手が足りなくて……」

Kさんは妙な顔をして、一瞬黙り込んだ。
その場では何も言わなかったのだが、その日の午後、Kさんはやはり行動に出た。
彼女は自分の味方になってくれそうな「甘くて優しい精神的大人」の古参スタッフ数名をつかまえて、涙ながらに「嫌みを言われた事実」を訴えたのである。

「ひどいと思わない? だって私は毎週こんなに大変な思いをして昼食作りに参加しているのに。これだけの野菜を扱うと、手だって荒れるじゃない。私はもともと肌が弱くて、本当なら水仕事なんてしないほうがいいタイプの人間なのに。それでも他人のために頑張っていたのに、〇〇さんはそのことをちっとも分かっていない。ぜんぜん私の苦労を見てくれていない。そればっかりか、さっきの発言、聞いたでしょ? あれって私を追い出すための嫌みだと思わない? ねぇ、そう思うでしょ? 教会にいる人間があんなひどいこと言っていいと思ってるのかな!」

ホームレスと意識共有する「体調ヒヤリング」や不潔な「衣類交換」のシフトに私を組み入れるなんて、どうかしてるわ。私、そんなつもりで来ているんじゃない。
裏方のスタッフになる気はないし、陰の苦労も背負わない。だって私は楽でキレイで傷つかない、自分が楽しめるものを提供していただくために、わざわざこの活動をしているの。

 

そうなのだ。
Kさんは「奉仕する側」ではなく、いつでもボランティアディズニーワールドのお客様気分なのだ。お客様がほうきと塵取り渡されて、「倉庫の掃除してきてよ」と言われたら、それは腹も立つだろう。

すてきなすてきなボランティアディズニーランドへようこそ。
くさいものもキタナイものもツライものも存在しない、楽しい楽しい夢の国。
配給のための美味しいお料理は存在しても、体臭や汚物のついた衣類は存在いたしません…。

 

私はKさんの一連の言動を見て思った。
Kさんはここでもやはり「お姫様」なのだと。
ボランティアディズニーランドで、ホームレスイベントを遊んでいるだけ。
やりたくないシフトを組まれたら、「ひどい仕打ち」と払いのけ、自らを正当化して現実逃避する。Kさんの目線で見ると、現実を突きつけるボランティアスタッフたちは、Kさんの楽しい夢を打ち砕くイジワルな悪人なのである。

やりたくない裏方の仕事を打診されることは、Kさんにとって「いじめ」に等しい。
Kさんはとても自分に正直で、子供のように自分の感情に素直である。キレイで愉快で楽しいことしかしたくない。
おそらく職場でも同様なのだろう。私はKさんの上司にひそかに同情した。

 

夢を見たい気持ちもわかるが、現実は夢の国ではない。夢の国になったらいいな、とは私も思っているのだが。

教会のボランティアの方たちは、少しでも夢の国に近づけるため、ひとりひとりが汚いツライ現実を直視して、日々地道な努力を重ねているのではなかろうか。表層面だけにスポットを当てていては、夢の国は永遠に砂上の楼閣となり果てるだろう。

 

私が感じていたKさんに対する奇妙な違和感の正体。
そうか、この人の心には「信念と誠実さ」がないのだ。
せっかく深淵の核心部分に触れる好機を得ているのだから、もう少し、深い部分の意識を共有してほしい。私はそう願わずにはいられなかった。
(Part12へつづく)

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あなたの周りに潜む善玉サイコパス: 共感力の個人差

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