●「共感力の個人差」~あなたの周りに潜む善玉サイコパス ~Part6


(つづき)
善玉サイコパスは、空気が読めない。
空気が読めないから、他人の話をひろわない。
平然と相手の話をぶつ切りにして「無礼」な態度をとるが、それがなぜ悪いのかということも理解できない。

パスされたボールを受け止めるしぐさも見せず、平気で他人の心を置き去りにする。
なぜなら彼ら彼女らは、他人を気づかい、相手の表情や空気を読みとり同調するという概念が存在しないから。
他人の心を推し量るだけの思いやりや共感性が欠如しているようなのだ。

 

くだんのKさんであるが、そもそも私とはPCのスクールで出会ったということは、以前に書いた。そのスクールでは課外授業の一環として、コミュニケーショントレーニングの授業を行っていた。

私とKさんも、その課外授業を履修した。
授業は毎回テーマを設定する。そしてその進行役と、体験談を話すストーリーテラーの二名を決める。ストーリーテラーの体験談をもとにしながら、授業を構成するという仕組みだった。

進行役は交代でまわってくる。
しかしストーリーテラーについては、自薦他薦でかまわない。そのテーマに則した経験をもつ人が請け負うことになる。

これが結構おもしろいのだ。
自分とは違う職種の内情や裏話が聞ける。また普段ふれないクラスメイトの社会人としての一面もかいまのぞくことができ、親しみを覚える。クラス全体の結束も生まれ、いいカンジに盛り上がるのだ。

ストーリーテラーの体験談を聞き終わると、進行役はそれを材料にしてテーマにつなげる。
「素晴らしい話でしたね。〇〇さんの実直な取り組みが、相手の信頼を得て契約に結び付いたのでしょうね」と感想をのべたり、おなじ営業職の人に「△△さんは、似たような経験はおありですか?」などたずねたりする。ストーリーテラーの体験談をふくらませたうえで、その流れでデータなどのテーマ内容につなげて授業を構成していく。
ある日、Kさんに進行役がまわってきた。テーマは「自然環境保護」。
ストーリーテラーは、建築業界で長年仕事をしてきたОさんだった。

授業当日、Оさんはニュータウンの開発にともない、生息地を奪われた野生動物のつらい実態を語った。
さらには環境破壊に反対する地元住民との衝突や、その果ての心のふれあいなど、心があたたかくなるヒューマンドラマをも語ってくれた。

クラス中がしんみりと、感動の空気につつまれていた。
Оさんの誠実な人柄もひしひしと伝わり、クラスは感動のなか、いっそ拍手でもわき起こりそうな雰囲気だった。

通常ならこれに進行役がつなぎのコメントをつけ、皆でОさんの体験を心でかみ砕きつつ、「自然環境保全」のデータ詳細資料について考える……という段取りだ。

 

しかしここでプチ事件は起きた。
Оさんが話し終わり、クラスがじんわりと感動につつまれているそのとき、進行役のKさんは無感動にそっけなく言った。
「……はい、じゃあ3ページ目のデータを見てください」
まさかの「ノーコメント」である。
「!!!」
予想外の出来事に、にクラス一同、「……ザワ……ザ、ザワ…??」という、妙な空気につつまれた。満身の力で「自分ヒストリー」を語ったОさんは、かわいそうにキョトンとしたまま、おかしな空気の中に放置された。

 

おそらくKさんは「自然環境保護」にも、あたたかいヒューマニズムにも、まったく興味がなかったのだ。「自分は興味ないこと」だから、ひろわずバッサリ切ったのだろう。授業全体の雰囲気やОさんの気持ちに配慮せず。

後でОさんは、こっそりと言った。
「オレ、Kさんに嫌われてるのかな。何か悪いことしたっけなぁ?」
決してそんなことはない、あれはもともとの性質だから仕方ないと、私はОさんに落ち度はないことを、念押しした。

Оさんは納得して、私に言った。
「前の会社にさ、Kさんと同じようなタイプの人、いたんだよね。オレ、Kさん見てるとその部下のこと思い出しちゃって……ちょっとしたトラウマだよ。その人さぁ、取引先から『発注の数字が間違ってます』って電話きたとき、何て言ったと思う?」
Оさんによると、そのKさん似の部下は、怒っている取引先相手に、こう言ったそうだ。
「その数字を入力したのは私じゃないですから、私のせいではありません」と。

そばで聞いていたОさんは、言葉にならない言葉を発し、猛ダッシュで電話を奪い、電話の向こうの取引相手に平身低頭、謝りに謝ったという。後日、その部下も連れて、先方に謝罪にうかがった。しかしその人は、なぜ自分がわざわざ取引先に謝りにいかなければならないのか理解できず、最後まで不満顔だったという。

 

善玉サイコパスは、「常識」を説明されないと理解できない。

「あのね、あなたは〇〇会社の一員です。会社組織で働くということは、個人もその会社のカンバンを背負うということなの。だからたとえ同僚のミスだったとしても、あなたは会社の一員として、取引先からミスを指摘されたら謝らなければいけないのですよ。だいじょうぶ。会社のみんな、あなたが直接ミスしたのでないことは、よくわかっていますからね」

まるで子供に教えるように、やさしくやさしく笑顔で諭すべきなのは、もう書き添えるまでもないだろう。そうしなければこちらが「パワハラ加害者」のレッテルを貼られ、拡散されてしまうのだから。

授業においてKさんにも、やはり具体的に「常識」を説明しないといけなかったのだろう。
「あのね、Оさんが話してくれた経験は、みんなが感動していたのですよ。だからそれについてコメントしたり意見交換したりする時間を設けないと、不完全燃焼になってしまうでしょう? だからKさんはОさんの体験談にふれてから、データ説明をしなければいけなかったの。そもそもストーリーテラーを設けた授業の趣旨というものは、個人の体験からよりその人を深く知り、コミュニケーションの糸口を作り、チームワークを生み出し、そうしてクラス全体の雰囲気を明るく盛り上げていくことにあるの。だから進行役のKさんが話をひろわないと、シュークリームのシュー生地がふくらまないように、授業も良いものとして成功しないのよ」

私はこれを、五十歳の女性に説明したくはないのだが。

 

「学校」や「PCスクールの仲間うち」ならばまだいい。
しかし会社組織ではどうだろうか。
会社は経済活動の場だ。善玉サイコパス本人が「社会人」を希望して企業に入社したかぎり、社会人としてのルールが求められる。
「会社」「組織」において、善玉サイコパス問題は深刻だ。収益や人事運営に直接ダメージをあたえる。しかし対策はむずかしい。

周りの人間にとってはつらい試練だ。
なぜなら善玉サイコパスのズレかたは微妙で珍妙ゆえに、そもそも言語化して他人に理解してもらうことがむずかしいのだから。
(Part7へつづく)

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あなたの周りに潜む善玉サイコパス: 共感力の個人差

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